大ヒット続ける「スタバ本」の新たな発想

大ヒット続ける「スタバ本」の新たな発想

 流通の危機感も分かるが、要は、広告収入を出版社だけが独占しないで、流通にも分配出来るようになれば良いのではないか、と思っていた。そうしたら、こういう手法が登場したのである。仕組みは極めてシンプルである。

スタバ本を書店・コンビニ配本で販売する。
定価を600円とすると、購読者は本書についている「ビバレッジカード」を持ってスターバックスにいくと、600円分のお好きなドリンクが飲める。
 一見しただけでは、普通のクーポン券のように見えるが、実体の構造は、かかわる人がすべてハッピーという、世界に類のない独自の構造を持っている。通常であれば、スターバックス(クライアント企業)が主体となってフリーペーパー制作なりクーポン雑誌への広告出稿という形で印刷物を発行する。ところが、スタバ本の場合は、大きな金銭的負担をクライアントはしていない。ただ、ビバレッジカードを持ってきた人に、自社製品を提供するという契約だけである。定価は600円だけど、実質的には原価の負担だけで新規顧客を誘引出来る。商品の現物提供であり、広告宣伝費という科目ではなく、通常の原価構造の中で処理出来るのである。

 これまでのフリーペーパーや雑誌掲載クーポンでは、取次・書店には、それほど多くの利益が発生しないが、スタバ本は通常の書籍なので、通常の流通マージンが確保される。流通にきっちりと企業タイアップの利益が配分されるシステムなのである。

 出版社にしてみれば、通常はそれほど販売が見込めない写真集に、定価と同じだけのメリットが加わることにより、販売増が望める。実際、スタバ本は15万部程度が販売されているようだ。特にコンビニの雑誌コーナーにはよく置かれている。スターバックスは、顧客の年齢層が上がっているので、コンビニに集まるような若い世代を顧客として誘引したいと思っているようだ。

 そして、読者は、本を買えばスターバックスでドリンクが飲めるので、どちらかがタダになった感覚になる。すべてがハッピーな構造の中でスタバ本が回転するのである。

 (中略)

 出版業界やテレビ業界の危機は、そこへの広告出稿に依存していた広告代理店の危機でもある。マスプロダクト、マスセールスの時代は、巨大な広告スペースの確保が広告代理店の役割であった。しかし、インターネットというほぼ無限大の広告スペースが登場して以来、広告に対する考え方が本質的に変化したことを、広告代理店は理解しなければならない。これまでは、クライアントと出版社の広告営業部と広告代理店だけで、それぞれのメリットを追求してきたが、これからは、読者や流通業者などのメリットも考えなければならない時代なのである。

 なるほど……。
 「広告」という考え方をはずすことで、新しい本の形ができる訳ですね。
 でも、広告会社だからこそできる広告以外のビジネスのモデルもきっとあるはず。
 広告会社が本を作ったっていい訳ですし。というか実際つくっていますし。
 これからはどんどんそういう新しい本が増えていくかもしれません!