和田竜『のぼうの城』
- 作者: 和田竜
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/11/28
- メディア: 単行本
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「わからぬ。なぜあの総大将が、ああも角の多い侍大将どもを指揮できるのか」
田楽踊で、あの大男の将器を確信した吉継だったが、最前の大広間での、正木、柴崎、酒巻ら重臣どもの成田長親に対する物言いをきいて、とうてい統率できているとはおもえなくなっていた。
「できないのさ」
三成は、当然のようにいった。
「それどころか何もできないんだ。それがあの成田長親という男の将器の秘密だ。それゆえ家臣はおろか領民までもが、何かと世話を焼きたくなる。そういう男なんだよあの男は」
秀吉が圧倒的な兵力で関東を平定した時に、一つだけ落とせなかった城。その城の主となった不思議な男のお話。読みやすくて面白い。登場人物たちのキャラも、歴史的な正確さはさておきシンプルでわかりやすい。
こういう並はずれた人徳をもっている人って、憧れます。自分の周りにも時々いるんですよね。なにができるわけでもないんだけど、人懐っこくてほっとけない感じのやつ。僕にはそんな天性のものはないと解ってはいるし、リーダーの立場にたてばもう少し別のリソースで頑張るしかないとは思うのですが。
『宇宙飛行士の育て方』に書いてある野口さんみたいなバランス型で何でもこなせるリーダーもいるし、『のぼうの城』の成田長親みたいな何にもできないリーダーもいる(かもしれない)。共同体って面白いですね。