イノベーションが生まれるところ 意図的な「多様性」をどう生み出し維持するか

イノベーションが生まれるところ 意図的な「多様性」をどう生み出し維持するか

 しかし、筆者が注目する特徴はこれらではない。そのコントローラーの重さである。Wiiのコントローラーの重さは137gである。この重さを決定するため、任天堂は様々な人間工学の観点から、1g単位で最適な重さを探索した。その結果、握る形でコントローラーを振り抜くジェスチャーをした際に、テニスやゴルフをしている感覚を疑似体験できる重さが137gであるとの結論を得た。このコントローラーは、無線通信で捜査するため、バッテリーが必要となる。割安で世界で最も普及しているバッテリーは単3型の電池である。その重さは2つで50gで、全世界共通の規格である。

 137gから50gを引いた87g。実はWiiの設計段階で、この重さが最初に決められた絶対条件なのである。すべてのデバイスや機能は、この87gで製造できるかどうかで判断される。技術特性が議論されるのは、重さの後である。

 現在のWiiのヒットを支えているのは、実はこの重さなのではないだろうか。これよりも重すぎても軽すぎても良くない。ユーザーは、コントローラーを振る感覚に満足がいかず、これほどのヒットとはならなかった可能性すらある。

 任天堂の岩田社長は、ゲーム「産業」の発展を願い、Wiiという製品を開発した。ゲーム産業を発展させるためには、より高度なゲームや高精細のCG(コンピューターグラフィックス)ではなく、いまだゲームを楽しんでいない年配の方や女性の取り込みであると判断した。

 日本の多くの企業は製品・サービスを「事業」の範囲内でのみとらえ、その中での競争に終始しがちである。故に、技術開発は即座に「軽薄短小」に向いてしまう。その延長線上での技術的な目新しさがなければ、新製品ではないと勘違いしてしまうのである。

 これは凄く面白い記事でした。Wiiとスタバのケースに共通するのは、人の生活の実感から考えていることなのでしょう。それを様々な角度で考えていくには、様々なバックグラウンドを持った人々の多様性が必要ということ。前に鈴木謙介さんのブログで引用した「現在あるものだって、十分に新しい要素は持っている。それを、うまく新しい枠組の中に位置づけられていないだけだ」という言葉も思い出されます。