電子書籍バブル、出版文化の維持に必要な試行錯誤

電子書籍バブル、出版文化の維持に必要な試行錯誤

 それが現実となり、電子書籍の市場が米国ネット企業に席巻されてしまったら、日本の社会全体としては悪影響が生じることを懸念せざるを得ないのではないだろうか。

 それはちょうど、ウェブ2.0バブルの過程でグーグルなどの米国ネット企業が世界の多くの国のネットを席巻し、その結果として文化やジャーナリズムの衰退がそれらの国で生じているのと同じである。

 それでは、日本の電子書籍市場を米国ネット企業が席巻したら、どのような悪影響が生じ得るのだろうか。日本の出版文化の衰退である。

 出版文化の正確な定義は存在しないが、私なりに解釈すると、多種多様な出版物(=書籍)が広くあまねく社会に普及していることを指すと考えている。そして、書籍こそが“知”を人と社会に伝える媒体である。書籍が普及することによって社会に知が集積され、また人は自らの知の構造化/体系化を行なうことができたのである。

 つまり、出版文化は、社会における知の蓄積と人の知の構造化/体系化にとって不可欠であり、その意味で数ある文化の中でももっとも重要なものの一つと考えられるのではないだろうか。