レヴィ・ストロース『野生の思考』

野生の思考

野生の思考

 理論は僕には難しすぎましたが、単純に文化人類学が調査した人間の習慣の数々がおもしろすぎでした。

 蜘蛛と白い地虫を呑み込む(イテルメン族・ヤクート族、不妊)、黒い黄金虫の脂肪(オセート族、恐水病)、潰したゴキブリと鶏の胆汁(スグルートのロシア人、腫瘍とヘルニア)、赤地虫の水漬け(ヤクート族、リューマチ)…(略)…キツツキのくちばしに触れる、キツツキの血を飲む、キツツキのミイラを粉末にして鼻から吸い込む、クチャ鳥の卵を呑み込む(ヤクート族、それぞれ歯痛、瘰癧、馬の諸病、結核に対して)…(略)。
 
 真の問題は、キツツキの嘴に触れれば歯痛がなおるかどうかではなくて、なんらかの観点からキツツキの嘴と人間の歯を『いっしょにする』ことができるかどうか(病気の治療はこの一致のさまざまな仮定的応用例のうちの一つにすぎない)、またこのように物と人間をまとめることによって世界に一つの秩序を導入するきっかけができるかどうかを知ることである。

 たとえばセミノール・インディアンは成人の名を作るのに、幾組かにわかれた少数の要素を、意味を無視して自由に組み合わせて用いる。すなわち、「品性」シリーズとして賢明、気違い、慎重、狡猾など、「形状」シリーズとして四角、円、球形、細長など、「動物」シリーズとして狼、鷲、海狸ピューマなどがあり、各シリーズから一語を取り出し並列することによって、「球形気違いピューマ」というような名を作るのである

 サルトルの批判で有名な最後の章は、かっこよかった。てか黄金虫に脂肪があるんだ。