内田樹『下流志向』

下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫)

下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫)

 さらに危機的なのは、子どもの目から見て、学校が提供する「教育サービス」のうち、その意味や有用性が理解できる商品がほとんどないということです。学校教育の場で子どもたちに示されているもののかなりの部分は、子どもたちにはその意味や有用性がまだよくわからないものです。当たり前ですけれど、それらのものが何の役に立つのかをまだ知らず、自分の手持ちの度量衡では、それらがどんな価値を持つのか計量できないという事実こそ、彼らが学校に行かなければならない当の理由だからです。
 教育の逆説は、教育から受益する人間は、自分がどのような利益を得ているのかを、教育がある程度進行するまで、場合によっては教育課程が終了するまで、言うことができないということにあります。

 「勉強は何の役に立つの?」と問う子供たち。「自分探しの旅」を続け、「自己責任だからいいでしょ?」と言って働かないニート。今の状況がいかに特殊であるかがわかる一冊。

 教育現場で起こっていることがちょくちょく書かれていますが、戦慄を覚えます……。怖いもの見たさにぜひご一読を。