「ポスト池上」どうなる?

「ポスト池上」どうなる?

 解説者としての池上さんはどこが優れていたのか。碓井広義上智大教授(メディア論)は四つの特長を挙げる。

 「幅広い知識を持ち、取材経験があり、テレビの特性を熟知し、NHKブランドの信頼性がある。この四つを兼ね備えた人はまずいない」

 その上で碓井教授は“ポスト池上”候補として、黒岩祐治さん(ジャーナリスト、国際医療福祉大学教授)、辛坊治郎さん(キャスター、元読売テレビ解説委員長)の2人の名を挙げた。

 「黒岩さんはフジテレビ系『報道2001』のキャスターを長く務め、取材経験も豊富。辛坊さんはアナウンサー出身で、ポイントを短時間で分かりやすくソフトに伝える力がある」

 池上さんに代わる解説役が活躍する場は、さらに広がるかもしれない。というのも池上さんの番組以外にも、分かりやすくニュースを解説する番組が増えてきたからだ。

 NHK総合では1月から「ニュース 深読み」(土曜前8・45)を始めた。フジテレビは昨年3月末スタートの「知りたがり!」(月〜金曜前9・55)で長時間のニュース解説コーナーを設けている。いずれも局所属のアナウンサーが、専門家の解説を聞く形式だ。

 「知りたがり!」の塩田千尋チーフプロデューサーは「ニュースを分かりたいと思っている人が、世の中に大勢いるという感触がある」と話す。

 碓井教授は「局はニュース解説に需要があることを知り、視聴者は分かる楽しさを知った。今後も形を変えて続くのでは」とみる。

 ただし、コラムニストの小田嶋隆さんからはこんな意見も出た。

 「池上さんの解説があまりに分かりやすいため、視聴者がニュースを解説とセットで楽しむようになった。見方や感想まで教えてもらいたいというのは、見る側の知的な体力低下の表れ」

 その意味では、見る側もそろそろ“池上教室”を卒業して応用編に進む時期なのかもしれない。

 小田嶋さんの言うとおりとはいえ、池上さんの解説は相当ニュートラルだし、だからこそ人気があるんじゃないかなと思います。他のコメンテーターはどうしてもどこかイデオロジカルで、観る人もそれに敏感に反応している。それは頭で考えることではなく、何となく聞いていて「安心」するか、何となく「いやな気分」になってくるか、というレベルの違いなんだけど、その感覚が凄く重要だったりするのだと思います。
 ニュースについて自分で考えるにはある程度の知識が必要で、単に知識を伝えるという部分でも池上さんは十分貢献してるんじゃないでしょうか。