川上未映子『ヘヴン』

ヘヴン

ヘヴン

 「目なんて、ただの目だよ。そんなことで大事なものが失われたり損なわれたりなんてしないわよ。残るものはなにしたって残るし、残らないものはなにしたって残らないんだから」

 是非読んでみてください!文学のための文学ではない、小説と物語に何ができるのかを見据えた小説だと思います。僕はこの小説に小説の未来の光を垣間見ました。凡庸な書き手ならば手に負えないようなテーマですが、彼女はそれを書ききることのできる文章家です。
 デビュー作の『わたくし率 イン 歯ー、または世界』と『ヘヴン』はまったく違うテイストを持った作品です。芥川賞の『乳と卵』はまだ読んでないのでこれから読むのですが、『わたくし率〜』が「文学的」に新しいものを提示して評価を集めた小説だとしたら、『ヘヴン』は明らかに「その先」を行っています。そう思います。
 それは村上春樹が初期に「文学的」なものに対して反発する形で小説を書いたのちに、「その先」の物語自体の力を追求し始めたのと同じように僕には映ります。川上未映子のこれからの小説が楽しみ過ぎます!てか川上さんかわいいです!