村上龍「電子書籍の会社をつくった理由」

村上龍「電子書籍の会社をつくった理由」

 「面白い作品はどっちでも売れるし、面白くない作品はどっちでも売れない。だからどっちが売れるかとかの議論はあんまり意味がないとやってみて思った」

(中略)

 「電子書籍というと難しく聞こえるけど、やってみたら案外ぱっとできてしまう」

 現状では、電子化を巡って、今あるパイ(作品)をどう分け合うのか、あるいは編集者、出版社、書店は生き残れるのかというようなネガティブな議論になりがちです。出版社、著者、書店、印刷所、取り次ぎなどの利害関係者が、ともすれば疑心暗鬼に陥るシーンも見受けられます。しかし、もっと積極的に、そして開放的になるべきだと、わたしは思います。現に、『歌うクジラ』の電子化は、わたしにとって心躍るイベントでした。グリオの若いデザイナー、プログラマー、アーティストたちとのコンテンツ制作は、時間を忘れるほど楽しかったのです。とくに、坂本龍一のオリジナル音楽が到着したときは、「小説のための音楽というのは歴史上なかった」という深い感慨がありました。そんな感慨を持ったのは、もちろん初めてでした。(JMM)

 電子書籍、実際どうなの、というところに一番近い人の話。
 「電子書籍を作る時のワクワク感」は興味深い。ビジネスのシステムが取り沙汰されていますが、作り手にとっても新しいことで、それを楽しめる人はやはり凄いなぁと思います。