キャリアに関するデータの真相 その1:「若者は内向き」という誤解。

キャリアに関するデータの真相 その1:「若者は内向き」という誤解。

 しかし、このデータ、全くのお門違いなのだ。

 文部科学省の発表データによれば、日本の総留学生数は、図表②に示すとおり、2004年にピークとなり、その後微減傾向だが、直近でも7万6,000人超。図表②ではピークだった1997年よりも20%以上も増えている。


 さて、どうしてこんな全く異なるデータが2つ並ぶのか?答えは簡単。図表①はアメリカへの留学数、図表②は全世界への留学生数だからだ。種明かししたのが図表③となる。


こちらで見ると、日本は北米・アジア・ヨーロッパなど、多地域に留学生が分散している。そのため、アメリカへは減少と、それだけのことなのだ。




 理由はいくつか考えられるだろう。

 まず、英語圏でも昨今、留学生の獲得競争が激しくなっていること。たとえば、イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドなどのもう当たり前の「アメリカの競合」のみならず、マルタ共和国やインド・スリランカなどの新興勢力も、この争いで台頭しはじめている。

 二つ目には、日本が文化的・経済的に成熟度が高まったことがあげられる。アメリカで先進技術や学問をキャッチアップすることが主目的の中国や韓国とは異なり、日本ではヨーロッパやアジア各国で、多様な文化を学ぶ人が多くなった。産業界主導もしくは就職や研究のため、といった留学ではなくなってきた結果、アメリカ一辺倒から世界への分散が起きた、ということなのだろう。




 それでも、2004年以降の微減が気にはなる。しかし、これも説明できる要因がある。それは、図表④に示す留学適齢人口(18〜29歳)の減少なのだ。


 この人口、1997年より減少を続けている。それでも、2004年まではヨーロッパやアジアなど新たな相手国への留学生増加で、全体増を維持してきたが、最近では各地域への留学生増加も一巡し、基礎人口の減少をカバーしきれず、微減傾向となっている、と読めるだろう。

 ちなみに、留学適例人口当たりの留学生数は、直近2009年現在でも0.4%と過去最高を更新し続けている。つまり、人口当たりの留学生は増え続けているのだ。