文化庁参事官「心外」と…伊賀の市民団体に

文化庁参事官「心外」と…伊賀の市民団体に

 伊賀市の庁舎建設問題で、現庁舎の保存を求めている市民グループ「『先人の思いを町づくりに』の会」(岡本栄代表)が27日、市役所を訪ね、文化庁参事官が「現庁舎と中央公民館には文化財としての価値がある」と記した所見書を、内保博仁市長らに提出した。


 岡本代表は「参事官は、俳聖殿の重文指定を起案した専門家。この所見書を理由に、全面新築計画を撤回してもらいたい」と市長に要望した。

 所見書を書いたのは、文化庁文化財部の大和智参事官(建造物担当)。今月初め、岡本代表から電話で依頼されて書いたという。戦後日本を代表する建築家、坂倉準三氏が設計した南北庁舎と中央公民館について「端正な外観を持つ優れた公共建築。築後50年を経過すれば、有形文化財として登録することを検討する価値がある」と記述した。

 岡本代表は、会員で奈良市の建築家、松本正己さんとともに市役所を訪問。内保市長と面会した岡本代表は「建造物の文化財的価値を熟知している大和参事官の見解をもとに方針転換しても、誰も責めない。引き返す最後のチャンスだ」と訴えた。今井由輝議長と勝本順子・教育委員長にも文書を渡し、庁舎の文化財指定を検討する文化財保護審議会の開催を改めて求めた。

 一方、大和参事官は、電話取材に対し「岡本代表への私信のつもりで一般論を書いた。あくまで個人的な見解であり、文化庁の方針ではなく、市に対して異を唱える意図もない。市長に提出したり公表したりという使われ方は心外で、ラブレターを公にされたような気がする」と話している。