いとうせいこう『ノーライフキング』

ノーライフキング (河出文庫)

ノーライフキング (河出文庫)

 「子どもが大人になるとき、彼らは一度『死ぬ』」。それがこの小説の描いたことともいえる。解説読んでなるほどでした。


 物語の中で、子どもたちが「遊び」で葬式をやってるうちに本気になってきちゃって泣き出してしまう、っていう場面があって、それが彼らの大人のなり方を象徴しているような感じ。

 まぁ話の筋をここに書くのは面倒なのでしないのですが、子どもたちは「自分とは何なのか」を完璧に把握してどこかに記せないと「死んでしまう」という妄想に駆られてしまうのです。ゲームの影響で。

 でも、子どもにはそんなことは当然できない。「僕はこういう人間です」なんて割り切って自分を客体化できないのが子どもの定義なのだから。だから、「死ぬ」しかない。「死ん」で、それが妄想だったということを悟って、リアルと妄想のないまぜになった世界は終わって、大人になっていく。自分で勝手に「死ぬ」っていう妄想を作り出しておいて本当に「死ん」で妄想の世界を勝手に終わらせちゃうところが、「遊びの葬式」にとってもよく似てます。

 そういえば僕も子どものころ、「これができなかったら死ぬ。」っていう変なルールいっぱい作ってたなぁ、と忘れていたものを思い出した。そんなルールを作るたびに、僕の「子ども」は「死ん」でいっていたのかもしれない。