本間洋平『家族ゲーム』

家族ゲーム (集英社文庫)

家族ゲーム (集英社文庫)

 演劇にしたら面白そうだなとまず思いました。松田優作主演で映画化はしているようです。
 典型的中流階層的言動の母、単純で頭で考えるより先にしゃべっている父、優等生だが決められたレールを走っている兄、落ちこぼれのいじめられっこの弟……。家族という閉じられた共同体に家庭教師という「異物」が入り込み、それぞれのバランスが崩れていく。その独特の「場」の雰囲気の変化を描くには、舞台がちょうどいい。ような気がする。
 いわゆる「中流階級」の家族の閉塞感が伝わってくる。今や「中流階級」という言葉はあまり意味をなさなくなったが、あいかわらず閉塞感という言葉はいろんなところで叫ばれている。僕としてはむしろ、そういう状況の中でいろんな形でサバイヴしている中高生の姿を描いた小説が読みたいかもです。閉塞感についてはもう小説を読まなくてもみんなうんざりするほど聞かされてます、多分。