村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

 「でも踊るしかないんだよ」と羊男は続けた。「それもとびっきり上手く踊るんだ。みんなが感心するくらいに。そうすればおいらもあんたのことを、手伝ってあげられるかもしれない。だから踊るんだよ。音楽の続く限り」

 他の作品より「時間」の効用がより語られているような気がした。
 多くの村上作品に中学生くらいの女の子が出てくるけど、今回は主人公が34歳と結構年をとっていることもあり、その少女に対して、「そう焦るなよ、時間がたてばわかるものもあるのさ」というスタンスで語りかけるようなシーンが多かった。
 目まぐるしく回り続ける今の世の中で、忘れがちなことですが、とても重要なことでもあります。