米中間選挙:勝者不在の選挙=北米総局長・小松健一

米中間選挙:勝者不在の選挙=北米総局長・小松健一

 選挙戦の最大焦点だった雇用状況の改善は容易ではない。冷戦崩壊後、米国が主導したグローバリズムと情報技術(IT)によって、米国の企業活動は拡大したが、雇用は外国に移転し続けた。中国、インドなど新興国の国際競争力が強まり、米国人の平均所得は過去10年間、ほとんど上がっていない。

 米企業は人件費を抑えて競争力を高めるため、非正規雇用を増やしている。政府支出を増やす「大きな政府」でも、減税を重視する「小さな政府」でも抜本的解決にはならないだろう。

 オバマ大統領がクリーンエネルギーなど環境関連の雇用創出や教育への投資を訴え続けたのは、そうした状況認識に基づいている。金融・経済危機を変革への転機としてグローバリズムへの構造的調整を図る考えだ。

 従業員1人あたり年間1万ドル(約80万円)近い医療保険料を支払う企業の負担も限界にきている。支払えない医療費が債務となり破産する人も増えている。医療保険改革を実施しなければ、米国の経済・社会の活力は再生できない。

 昨年1月の大統領就任演説でオバマ氏は「困難な選択をして新しい時代に備える」決意を示した。しかし、長期ビジョンに人々は付いていく余裕がなくなった。首都ワシントンなど東部地域で民主党の選挙運動に携わった女性デロレス・マックラムさん(60)は言う。「例えて言えば、時間をかけて作るおいしいコーヒーよりも、インスタントコーヒーを欲しがっている。おいしいから待ってと説明しても、誰も聞こうとしなかった」

 待つことができない国民意識は、政治変動を再び短期間でもたらす可能性をはらむ。将来が不確実な時代の勝者なき選挙だったと言うべきか。

 最後の例えは日本にも共通して言えるんじゃないかな。