TPP“迷走”、閣内不一致も深刻

TPP“迷走”、閣内不一致も深刻

 試算では、農林水産省がTPPに参加すると11・6兆円の損失が出るとしたのに対し、経済産業省はTPPに参加しないことが10・5兆円の損失を生むと算出した。農業と輸出産業という所管分野の違いはあるが、プラスとマイナスで正反対の結果が示された。

 原因は、両省が互いに「極端だ」と批判する前提条件に色濃く出ている。

 農水省は「TPPで関税が撤廃されると、すべての国との間で輸入関税を維持できない」と主張。主要19品目を全世界に開放し、農家への戸別所得補償制度の拡充を含めて何も農業対策を行わないことを前提にし、「被害」を強調した。

 一方、経産省は「TPPに参加しないとEUや中国とも自由化できない。ライバルの韓国は主要国との貿易自由化を進める」という前提で、「日本が鎖国に向かうシナリオ」(担当者)となっている。

 閣内の調整不足は深刻だ。前原外相は27日の衆院外務委員会で、「役所の思いが込められた数字」と指摘した。だが、「外務省はまとめる立場にはない」として議論をリードする姿勢は見せなかった。